教育に潜むジェンダーと子どもの進路

保護者の皆さまにお伝えしたいのは、「生物学的な性差」そのものを論じるのではなく、私たちの身近な教育環境に潜む“無意識の思い込み”が、子どもの可能性を左右してしまうという点です。

たとえば、東京と地方では女子の東大進学に対する保護者や教師の意識に大きな差があることが指摘されています。地方の女子高校生は「東大は特別で自分には縁がない」というイメージを抱きやすく、さらに身近に女性のロールモデルが少ないため、結果として地元大学で医師や薬剤師といった資格志向に進みやすい傾向があります。つまり、入試という公平な舞台に立つ前から、無意識のジェンダーバイアスによる“進路のトラッキング”が働いてしまうのです。

男子は社会系や理工系を志望する割合が圧倒的に多いのに対し、女子は人文系や教育系に集中し、理工系はごく少数にとどまっています。東京大学の女子学生比率も、2022年度になってようやく20%を超えたにすぎません。

このように、子どもの進路や将来の選択が「性別らしさ」のイメージによって狭められてしまうのは、生物学的な差ではなく、教育や社会に埋め込まれた思い込みの積み重ねです。私たち大人が無意識のうちに抱く固定観念を見直すことこそ、子どもの自由で多様な可能性を広げる第一歩になります。

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