親が医師なら子どもも医学部へという時代ではなくなっている

かつては「親が医師なら子どもも医学部へ」という進路が当然視され、社会的地位や安定収入の象徴とも考えられてきました。しかし今やその構図は大きく揺らいでいます。

背景には、日本の医療制度を取り巻く深刻な状況があります。全国の病院の約七割が赤字経営に陥り、医師や看護師をはじめとする医療従事者の労働環境も決して楽ではありません。長時間労働や訴訟リスク、経営の不透明さが重なり、医師という職業の「安定神話」は崩れつつあります。

さらに医療費の増大に対処するため、国は軽度の体調不良を自分で管理する「セルフメディケーション」の普及を推進し、医師の処方薬を市販薬に切り替えるスイッチOTC化も進展しています。市民にとっては利便性が高まり、医療費削減にも寄与しますが、一方で「医師の独占領域」が縮小し、従来の価値観では測れない時代となりました。

このように、医師であること自体が必ずしも経済的・社会的な安定を保証しなくなった現在、親が医師だから子どもも医学部へ進学させるという単線的な選択は過去のものとなりつつあります。

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